「嫌やろうけど、言うてくれなわからへんし。お前かて、忘れたいんやろ? ちゃんと言うて、ほんで俺が何をしてるか、ちゃんと見とって」 「どこから、されたん?」 「喉・・・、とか・・・」 ひよ里の声は上擦って、変な声になってしまったことを気にしていると、真子の唇が喉に降りてきた。温かい舌の滑った感触に、息が詰まる。気持ちの悪い行為としか思えなかったのに、まったく別のものに感じる。つくづく自分はげんきんな奴だなとひよ里は心の中で自嘲した。唇が鎖骨を伝い、紅い痕がついた場所まで這わせれば、ほんの少しだけ歯を立ててから、吸いつく。 「――――ッ――…」 ジクリと吸われた場所が痛んだ。真子が上書きをするかのように紅い痕が散った場所に舌と、唇を器用に這わせながら吸う。触れられた部分が疼くような熱を持つ。それだけで、すでに息が上がり始めた。 胸を触られたのかと訊かれ、ひよ里は羞じらいながら頷いた。大きな男の手が、わずかに膨らんだひよ里の胸を包み込む。丁寧に揉みしだかれ熱い吐息が漏れた。二つの胸の中心にある蕾を口に含み舌で転がす。これが自分が出した声なのかと疑うほどの甘ったるい声に羞恥し目を閉じてしまうが、真子はそれを許さずに見るようにと促した。 全身を唇と舌で愛撫したあと、真子は少しだけひよ里を見つめ、彼女の唇にくちづけた。はじめは少し遠慮がちで、啄ばむような優しいくちづけは次第に深く激しいものになる。角度を変えて、わずかに開いたひよ里のくちびるから真子の舌が侵入する。丁寧に、歯ぐきから歯の裏までゆっくりと撫でるように舐める。舌を絡め取る。溢れた唾液はどちらの物とも区別がつかず、受け切れずにひよ里の口のはじから零れた。殴られて切れたところが舌を這わされた時に疼いたが、それよりも真子の舌に感じてしまっていた。 酸素をすべて奪うかのようにくちづけられ、息苦しさを覚えた頃、やっと唇を解放された。透明な糸がつながり、それからぷつんと切れる。はぁはぁとすっかり上がってしまった息を互いに整える。 「あとは、もう無い?」 息苦しいさもあいまってか、真子の頬も赤く上気しているのがわかった。無いと頷いてこたえると、寝かせられたまま縋るように抱きしめられて、ひよ里は戸惑う。 「ごめんな、嫌な事思い出させて」 かぶりをふった。恥ずかしかったけれど、嫌じゃなかった。身体に触れる手もくちびるも下も、全部優しいと思った。胸の中が苦しくなる。 「優しゅう出来んて、言うたやんか」 「こんなん、いっこも優しい事あらへんやろ」 ―――じゅうぶん優しいわ、アホ。 想いが染みて、涙が溢れる。唇が触れるか触れないかの距離で見つめられ、改めて訊かれた。 「今やったら、やめれる。いややって言うてくれたら、これ以上のことせぇへん。せやけど、これ以上、コトすすめたら、俺、自分止められへん」 真剣な瞳に射抜かれる。低い男の声はひよ里の魂を揺さぶる。 「本当に、俺でええの? 後悔、せぇへんか?」 返事をする代わりに、真子の唇に自分からくちづけた。
身体中に雨が降るようにくちづけ、手でまさぐりながら真子は舌を這わせていく。ひよ里の脚の間の一番敏感な部分に顔を埋めると、先ほどまでの愛撫のせいか、その場所はすでに潤っていた。秘裂に舌先を這わせ蜜を舐め取れば、逃げる様に腰をくねらせ高い音色で啼く。年のわりに幼さを残す身体つきは、成熟した大人の女の身体とはまた違った意味でのいやらしさがあった。真子は早くどうにかしてしまいたい気持ちを抑え、丁寧に慣らしていく。 秘裂の上の花芯を指の腹で捏ね固く尖らせた舌先で突いてやると、ひよ里はいやいやと頭をふる。与えられるどこまでも甘い刺激に過敏に身体が跳ね応える。執拗にそこを舐めていると、とうとう我慢できなくなって弓なりに身体をしならせはじめる。足先まで強張らせ、一際甲高く啼いた後、急に身体が弛緩し太腿が痙攣したかのように小刻みに震えた。 軽く気を遣ったのがわかった。 はっはっと、短く肩で呼吸するひよ里が心配で声を掛ければ、上擦った甘い声で大丈夫だと返事をする。その表情が、目つきがやけに婀娜めいていて、真子の欲をさらにあおった。指をひよ里の中にゆっくりと差し込んで、蜜で十分潤っているが狭いその場所をゆるゆるとほぐす様に動かす。僅かな動きでも魚が浅瀬で跳ねているような音がする。 どれだけ潤っていてもやはり痛みはあるようで「ぅぅ…」と小さく呻き声が漏れたが、それでも続けていると、艶の帯びた声に変わる。もう一本差し込むと、 ひよ里は甘ったるく覆いかぶさる男の名前を呼んだ。 上手に呼吸が出来ない。 「ゆっくり、息を吸って」そういう真子の声が何故か遠くで聞こえた。何回達してしまったのか良くわからない。ひよ里は言われた通りにゆっくりと息を吸い、吐いてみる。 先ほどよりも幾分落ちついた。重たい瞼をやっと持ち上げれば、真子が心配そうに覗きこんでいた。 そんな顔、しないでほしい。
「嬉しい」 優しい男の腕の中で素直に泣いてもいいだろうか。
確認するように、何度も、何度も。たくさん名前を呼んで、呼ばれた。 愛の言葉を交わし合った。 破瓜の痛みは想像以上で、またひよ里の頬を濡らした。 自分の上で綺麗な髪を振り乱して、汗を浮かべて必死に何かに耐えているその姿は、なんだか愛おしかった。 ひよ里は考える。 惣右介があの時言っていたことが、真子が惣右介を監視しているというのが本当ならば、やはり今回のことは真子の頭を悩ませてしまうのではないかと。あの男が言っている事をすべて信用しているわけではない、が、やたら真子の負の感情を煽ろうとしていることを考えれば、あながち嘘では無いのかもしれない。 それに今回のことは、公になれば真子だけじゃなく、喜助の方にも迷惑を掛けるかもしれない。技術開発局も順調にいっているだけにそれは避けたいし、第一、知られたくも無い。 だからといって、真子も五番隊を預かる者としての落とし前もあるだろう。内々に処分を、といっても何かしら噂が立つかもしれない。自分の軽率な行動に今更ながら恥じることしかできなかった。 どうすれば、いいだろう。
|