恋人たちのクリスマス 2011
〜拳西クンと白サンの場合〜
「けーんせーい!すっごーい!おいしそー」 「うっわ!こっちくんな!!」 「えー?なんでなんでー?」
ここは仮面の軍勢たちのアジトの地下の修行場。 本日はここでクリスマスパーティーをするべく拳西を始めとする仮面の軍勢の男子たちは、その準備に追われていた。 申し訳ない程度の大きさのツリーも飾り(1か月前には白に急かされ出していたが)、机の上には、拳西お手製のパーティー料理が所狭しと並んでいる。 お皿などのセッティングはローズが。雰囲気を出すBGMの選曲は平子が。 ハッチとラブはお酒の買い出しに行っていた。 仮面の軍勢女子チームはクリスマスパーティーの準備の応援に熱を上げていた。つまるところ、何も手伝わず、指示だけは一丁前に出していた。もちろんその筆頭はリサである。 彼女の指示は絶対的なものがあり、仮面の軍勢の影のリーダーは彼女だと云っても過言ではないであろう。 ・・・それは、さておき。 拳西と白に話を戻そう。 白と拳西以外の仮面のメンバーは各々用がありこの修行場には彼女らしかいなかった。 「拳西、このポテトサラダ食べてもいい?」 「ダメに決まってんだろ。お前のつまみ食いの為に作ったんじゃねぇ」 「だけどー、おいしそうじゃん?そしたら食べたくなるじゃん?仕方なくない?」 「仕方なくねぇよ。大人しく其処で待ってろ」 「えー!拳西のケチンボ―!」 ぶーっとふくれっ面になってその場に座り込む白。 食べる事が大好きな白は、お菓子の次に大好きな食べ物は拳西の作った料理だ。 どちらかというと荒っぽい男の料理といった感じで味付けも結構雑だったりするのだが、白にとってはそれが最高のスパイスだったりする。 そう思うのは好きな男が作った手料理のせいなのだろうか?そう考えると白の胸の中はほんの少しだけくすぐったくなった。 けれど、今はおあずけをくらった状態。食い意地の張った彼女にはとても面白くない状況である。 「けんせーい。拳西、拳西、拳西ッ!」 「うっぜーな。黙れよ」 「何か食べさせてよー」 「お前さっきまでポッキー食ってたじゃねぇか」 「もう、ポッキー無くなったもん。拳西の作ったの食べたいー」 「・・・・・・」 白の我がままに、はぁーと盛大にため息をついた。やれやれ、面倒な奴だなと言わんばかりの感じで。 皿に盛ったポテトサラダにミニトマトのトッピングを施していたのだがその手を止めて、スプーンを取り出してソレでサラダをひとすくいして、白の元に持って行った。 「一口だけ。これ食ったら部屋戻ってろ。邪魔くせぇから」 「えー?こんだけ?」 「文句言うな。後で食えるだろ。少しは我慢しろ」 「ま、いいや。ありがと。拳西、大好き」 えへへと嬉しそうに笑ってスプーンの上にこんもり乗ったポテトサラダを大口を開けてパクリと食べた。 彼女が嬉しいのはポテトサラダが食べれたからだけじゃない。面倒くさそうに自分をあしらうのに、最終的には我がままをきいてくれる、そんな拳西が愛しくて堪らないからだろう。 「おいし!やっぱ拳西の料理、おいしい」 もぐもぐ、幸せなオーラを出しながらニコニコと笑う。そんな白の顔を拳西は少しだけ難しい顔でまじまじと見てから、 「そうか、うまいか」 「うん、白、拳西の料理大好き」 「・・・・・・」 拳西の大きな男らしい手が白の柔らかい頬に触れた。 「・・・ん?拳西?」 思わず白は拳西の顔を見ると、そのままキスをされた。 優しく、2,3度啄ばむようにキスをされ、その後すぐに深くくちづける。 角度を変えながら互いの酸素を奪い合うように深く深く、くちづけを交わし合う。 白の背中の方にまわされた拳西の手が、彼女の腰や背を撫でまわす様に動く。白はもっとキスがしたくて、拳西の首の後ろに手をまわす。 互いの唾液が混じり合ったものが白の口の端から零れ出し始めた頃、ようやく離れた。 「けん、せ、どして・・・」 頬を上気させた白が、キスの余韻をひきずった濡れた様な瞳で拳西を見る。 彼からのくちづけはとても嬉しかったのだが、まさか今されるとは持っていなかったようで白は少し吃驚しているようだった。 「味見。ちょっとマヨネーズ入れすぎたか・・・、サラダ」 余裕のある顔でそんなことを言う拳西に、ちょっと腹が立つ白。思わず口を尖らせた。 自分は拳西のあのキスだけでトロトロ溶けてしまいそうになったのに、と不満に思うのだ。 それが伝わったのか、拳西が白のおでこをツンツンと小突く。 「嫌だったか?」 「ううん。そんなことない」 ふるふる、頭をふる。 「も、ちょっと、してほしい。拳西」 「欲張り」
聖なる夜。 欲しがりな彼女の欲張りなお願い事。 みんなが集まってくるもう少しの間だけ、二人の甘い時間は続く。
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